喧嘩札・千社札の製造方法「彫り札屋は一枚板の直彫り!」

「彫刻」に多くの種類があるのは知っていますか?

喧嘩札・千社札の加工機械
彫り札屋の彫刻機
左はNC機械彫り・右は”手彫り”の機械

今回は製造方法のお話。彫刻とか直彫りとか手彫りとかよく見るけど何が違うの?


「彫り札屋ブランド」の喧嘩札は伝統の「直彫り=浮き彫り」です。自身の喧嘩札がどの様に作られているのか、色々な角度から「彫刻カテゴリー」を紹介出来たらな、と思います。シブヤ彫刻の概念が根強く入っているので世界認識レベルで知りたい方は個々にお調べする事を推奨します。


「彫り札屋」喧嘩札の加工方法は自動彫刻機の「直彫り=浮き彫り」となります。


材料に刃物(工具)で直接彫刻(彫り出し)していきます。そのままの意味です。一枚の真鍮板にデザインを彫りおこす、とも言えますね(立体的に凸で彫刻する為、浮かし彫り・浮き彫りとも言います)なので、刃物の先端が細いほど「繊細な柄・細い隙間」が表現できます。


細かい喧嘩札の文字
約4mmの「焼」の文字。肉眼でも視認可能です


上記写真の様に小さい文字でも真鍮(光の当て方で写真は真鍮っぽくないですが真鍮です)に直彫りします。工具の刃物の手入れが大変ですが、ビシッと文字が彫られているとやはり見た目(文字の際立ち方)が違います。彫りの深さは1mm入れています。1mm以下でも影や立体感が十分に出ますが、1mm以下だと迫力や彫り物感が物足りないと感じたのを記憶しています。


お祭りの喧嘩札
当社の喧嘩札
深さ1mmの直彫りで、焦げや印刷・色付けではないので「薄れる・消える」事はありません


「彫刻直彫り」違いで刃物ではなく「レーザー(エネルギー)」で彫る会社様もありますね。レーザーも物凄く種類があります、趣味の範囲から工業用まで色々です...。

木材や薄いステンレスの喧嘩札はレーザーで彫れます。光を当てた所が黒く焦げ付くのもカッコいい祭り札ですね。


Amazonより
一例ですが...こんな機械で、バーっと木に「光」で彫っていきます。出力で焦げ方も深さも変わります。


「彫り札屋」の喧嘩札・千社札は金属なので、刃物で彫っています。レーザーはとてもいいです、超精密に彫れます。金属を削れるくらいの超出力があれば...。あるにはあるのですが、導入するにはまだ億前後の値段がしますね。

しかし、当社は「伝統の技術で日本の伝統品をつくる」事で彫刻技術を守っていきたいので、やはり刃物での直彫り伝統方法を行っておりますが・・・レーザーや3Dプリンターには憧れを持ったことは正直あります。時代の先端技術は知っておかなければなりませんし、先端技術で生まれた作品にはしっかりとリスペクトします。

話がずれましたが直彫りとは大まかに言うと、工具や熱エネルギーで材料自体を彫っていく方法になります。その「材料が何なのか」が重要で、工具・機械・手段が変わっていきます。喧嘩札一つとっても「銀・ステン・木・科学素材」など多種多様ですので、製造方法・道具もそれに見合ったモノが必要という事になります。

では、「手彫り」とはなんぞや...


写真で見てみましょう。まずは多くの方が思い浮かぶものは...


上:菅谷彫金工房 中:誠弘堂 下:仏師.坂上俊陽


この様な感じで手彫りを思い浮かべるのではないでしょうか?


一例写真なので道具の詳細は不明なのですが、上は鏨(タガネ)で金属に彫っていますね、「彫金師」と呼ばれる方も。当社の歴史もこの鏨を使った金属彫刻から始まっていて、当ブログのアイコンになっているのが初代です。中は手彫り印鑑ですね、「印章彫刻技能士」という技能を認められた方もいます。下は仏像を彫る「仏師」の坂上氏。皆様とてつもない技術です。

シブヤ彫刻(彫り札屋)は敢えて言うなれば「工業彫刻」とでも言いましょうか、刻印など「工業・製品」に関わる印章・打刻印・ホットスタンプ印を製作してきました。シブヤ彫刻での手彫りの位置づけは少し皆様のイメージと違うかもしれません。写真で見てみましょう


喧嘩札の機械彫り
「彫刻機」を使用した手彫り
左:全体像 中:金属を彫る場所 右:原稿を置く場所


これがシブヤ彫刻での「手彫り」の位置づけ。業界の仲間内でも「手で彫る」と言ったらコレになります。工業彫刻の独特の認識なのか地域性なのか全国区なのか定かではないのですが「手動・人力だけど機械使ってるじゃん」ってなりますけど「工業」となると同じ制度・寸法が必要なのでこの様なカタチになっています。


「彫刻機」はこちらのブログでご紹介しています。
焼印屋@シブヤ彫刻:今と昔...加工の移り変わり

つまり、「手彫り・直彫り」は様々な見解・方法がある


という事でしょうか。彫り札屋の喧嘩札に焦点を当ててますので「他の店の手彫りは言っている事が違うぞ!」なんて事は書きません。そのお店なりの歴史・解釈あるのです。

大まかに表すと、「手彫りの直彫り」「彫刻機の直彫り」の2種類に分ける事ができます。...ややこしいですね。

気になられる方・こだわりを持たれる方は「手彫りってどういう事?」とお店に問い合わせてみましょう。

最後に、彫刻と関係がある別の製造方法が一つあります。

よくあるお問い合わせで「「鋳造」ですか?」とのご質問。


凄い知識を持っているお客様だなぁ...と。鋳造も彫刻と関係があります。「彫る」って色々あるんです。

では鋳造とは...製造工程(それなりに端折りますが)でみていきましょう。
彫り札屋の喧嘩札を作るには、金属板に直彫りで金属を削り、彫り出して完成。いわゆる「彫刻」です。手段が手彫りだろうが自動彫刻機だろうがです。

では、製造工程を変えて喧嘩札を作ってみましょう。金属を溶かして「型」に入れ、固めて完成。これが「鋳造」です。


シルバーの鋳造 喧嘩札
ものづくり大学より
シルバー(銀)の鋳造


彫刻とどの様に関係が?他業種様の専門分野になるので、噛砕いての説明になりますことご了承ください。

金属を入れる「型」に彫刻が関係する場合があります。この型を「彫って」作る事があるからです。工房や工場によって型の作り方は様々だと思いますが、鋳造は「型自体を彫る」ということ、対して「彫り札屋ブランドの直彫り」は「材料自体を彫る」ことになります。

彫刻と鋳造でつくる「喧嘩札」の違いは、まず完成までの工程・日数ですね。金属を溶かす・固める、コレだけでも物凄い技術・日数が絡んでいます(納期が3週間前後でしたら、まず「鋳造」です)そして完成品の「細かさ・繊細さ・型の彫りの深さの3点、この3点が「彫刻」と少し絡んでくるかな、と思います。ドロッと溶かした金属を型に流し込む訳ですから...


イメージ写真です。


「型」が細かすぎる・柄やデザインが小さすぎると流れ込まない・細部まで表現できない、という事があります。ですので、この型の彫り具合・精度で出来上がりが左右されるとも言えます。(鋳造でもとても素晴らしい作品ができます!)



以上を踏まえて、お問い合わせにある「鋳造ですか?」の答えは「彫り札屋の喧嘩札は直彫り彫刻(浮き彫り)です」になります。




なぜ「鋳造ですか?」の質問がくるのか。まぁ憶測ですが...
  • A社の喧嘩札は1mm彫りです!
  • B社の喧嘩札は1mm彫りです!

という宣伝は内容が違う事がある、という事を分かっているお客様なんですね。詳しいお客様や直彫りに拘るお客様からは、色々とお問い合わせ・聞いた方が早いわ!ってよく電話がきます。皆様に分かりやすく敢えて宣伝文句を書くと...敢えてですよ

  • 「彫り札屋」の喧嘩札は、彫刻直彫りで削り出し、一枚板を1mmの彫り深さで仕上げます!
  • 「鋳造札屋」の喧嘩札は、金属を型に流し込む鋳造で、を1mmの深さで彫って金属を流し・固めます!

この様に宣伝文句を書くと「なに」を彫っているのか、違いがわかりますね。


素材自体を彫り、完成品を作る。型を彫り、素材を溶かして固めて作る。「1mm彫る」の宣伝が同じでも商品の仕様・使用工具・工程日数はまったく違います。すると当然ながら金額も違ってきますね。彫刻品(喧嘩札)以外でも、宣伝文句が同じでも金額・納期の差異があるのはこんな事情から...という事もあるかもしれませんね。


「彫刻」も「鋳造」も素晴らしいです、どちらが優れているという事ではないと思います。伝統の技術ですし、どちらもメリット・デメリットがありますので。


彫り札屋ごあいさつ

今回はボリュームのあるブログとなりました。所々、私見が入っていると思います。すみません。


呼び方のまとめ(技術/手段=名称/呼び名)


  1. 彫刻(材料をそのまま彫刻)=直彫り・彫り込み(凹)・浮かし彫り/浮き彫り(凸)
  2. 鋳造(型を彫刻して材料を流し込む)=鋳造彫刻・鋳物・塑像(そぞう)
  3. エッチング(材料のデザイン表面以外を溶かして浮き上がらせる)=腐食・腐食加工



彫刻は凹か凸で彫るかで呼び方が少し変わるのですね。鋳造も色々な種類がありますがここでは割愛させていただきます。

金属の喧嘩札・千社札はこうやって出来ているんだ!彫刻って色々なのね...と少しでも感じていただけると幸いです。

お時間あれば「彫り札屋」の喧嘩札をご覧ください。お読みいただき、ありがとうございました。

彫り札屋ホームページ:https://www.horifudaya.jp
ブログ担当:なおき


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